今回は、前回の「サークルやSNSで集まる登山パーティーにおけるリーダー論①周りを見る能力」に引き続き
不特定多数の人が集まる登山パーティーにおいて
リーダーをする上で大切なことは何なのか、実体験から感じたことを書いていきます。
僕は、不特定多数の集まりの中に身を置き、登山を嗜んでいる一人です。
登山経験も長くなり、そのような集まりの中で
リーダーとして10人程度の登山パーティーを率いる機会も増えてきましたので、
これからリーダーをする人の参考になる情報になればと思います。
登山パーティーにおけるリーダーとは……
前回の記事の「登山パーティーにおけるリーダーとは……」で説明したので、省きますが
リーダーの決定には技術面や適性はあまり考慮されないというのが
サークルやSNSで集まった登山パーティーの現状であることから
リーダーに必要な能力って何だろう?と考えました。
リーダーとして必要な3つの能力
自分も何度かリーダーを経験する中で感じた、リーダーとして必要な3つの能力があります。
それが
- 周りを見る能力
- 決断する能力
- メンバーを信頼する能力
です。
今回は決断する能力について、紹介します。
決断する能力が必要な場面
リーダーにはさまざまな場面で決断が求められます。
この決断がしっかりできないと
登山パーティーの指示系統が混乱してしまい、安全な登山を達成することができなくなります。
登山の中には決断が必要な場面がたくさんあります。
その一例を紹介しましょう。
登山の催行判断
登山に行くかどうかを判断します。
この判断は結構重要で
もし間違った判断をしてしまうと登山パーティーを危険にさらすことになります。
登山の催行判断が難しい点として
- 登山は1週間以上前から計画している
- 楽しさや安全性が天候によって大きく変わる
- 山の天候は町の天候より予測しづらい
- 登山に行くメンバーによって行けるルートの難易度が違う
などさまざまな要素がからみ合っていることによります。
これらの要素を総合して、リーダーは催行判断をすることになります。
道順の判断
登山の道順を判断します。
登山道は一本道ではありません。さまざまなところに分岐点があります。
そのような分岐点一つ一つでどちらに進むか決断しなくてはなりません。
道順を誤ると、
目的地と全く違う方向に行ってしまうかもしれませんし
同じ目的地に辿り着いても難易度が高い道を通る必要があるかもしれません。
登山パーティーに応じた道順の判断を
分岐点が現れる度に、地図とその場の情報から決断する必要があります。
休憩の判断
登山する際には時々休憩をとる必要があります。
この休憩をとるタイミング、時間、頻度をリーダーが判断します。
この判断は、登山パーティーがどのくらい疲れているかを把握しながら決めていく必要があるため
「周りを見る能力」も同時に必要となります。
また、休憩は安易に長く多くとれば良いというわけではありません。
休憩をとり過ぎてしまうと
登山のコースタイムが長くなり予定通りに下山できない可能性があります。
そのため、パーティの状況とコースタイムの両方を加味した休憩の判断をする必要があります。
撤退の判断
リーダーは登山が続行不可能である場合、撤退の判断をします。
続行不可能になる理由として
- 天候悪化(雨や強風、ガスによる視界不良など)
- コースタイムの超過
- 登山に行くメンバーの疲労や体調悪化、怪我
- 登山道の状態(登山道の崩落や積雪など)
があげられます。
撤退の判断が遅れてしまうと取り返しがつかない事態になる可能性があるので
早めに判断する必要があります。
決断するということは
パーティーの意見を収集してから決断する
「リーダーは決断することが重要である」とここまで話してきましたが
初めてリーダーをするあなたは、そんなこと自分で判断できないよと思ったかもしれません。
それは大きな誤解です!
リーダーは自分ひとりで決断する必要はありません。
ぼくもリーダーをする際に、独断で物事を決めることはほとんどありません。
例えば、登山に行くかどうか決める時にはこのようなやり取りを行います。
明日は降水確率が40%ですが、登山に行きたいですか?
私は、雨でも昼休憩場所に屋根があるなら大丈夫
ぼくは降水確率40%なら登山に行きたい
明日は朝10時からは晴れそうなので、遅めに出発するのはどうだろう
このようなパーティーの意見を踏まえて、登山に行くか決めれば良いのです。
もし降水確率40%の情報だけで判断したなら
雨が降ったらパーティーのメンバーが嫌がるのでは、と登山を中止にしたかもしれません。
しかし、一度パーティーの意見を聞くことによって
「遅めに出発し、昼休憩場所に屋根がある登山コースに変更する」
ことで登山を催行することができました。
このように、パーティーの意見を収集し
どうするか決断することがリーダーの役割なのです。
一度決めたことには責任をもつ
パーティーから収集した意見を踏まえて、リーダーは決断します。
そこで、絶対やってはいけないことは
その判断が間違っていた場合に
その判断の理由になった意見を言ってくれた人に責任をなすりつけることです。
もしこのようなことをしたなら、リーダーの信頼は完全になくなります。
責任をなすりつけたメンバーは、二度と意見を言ってくれなくなるかもしれません。
リーダーは一度決めたことに責任を持ちましょう。
一度決めたことに責任をもてるかどうか、はリーダーの資質があるかどうか同じくらい大切です。
安全性に関わることはメンバーと対立してでも決断する
リーダーも人間ですので、パーティーのメンバーとは仲良くしたいですし、
メンバーがしたいということは、できるだけ実現するように努力すると思います。
ただ安全性に関わることは、メンバーの意見と対立してでも決断しなくてはいけません。
例えば
- 台風が直撃する日での登山の催行
- 尾根筋で目印がない状態で、ガスで視界不良になった場合に登山を継続する
- 雨天時に、滑りやすい岩場で滑落の危険性があるルートを選択する
- 明らかに体調が悪そうな人を一人残して登山を継続する
などがあげられます。
このような場合はメンバーと意見が対立してでも一番安全と思われる決断をしましょう。
リーダーの役割は、パーティーを山から無事に下界へ帰すことです。
決断したことが間違っていた時に落ち込まない
このように、リーダーとして責任をもち一番正しいという選択をしたと思っても
その判断が間違えてしまうことはあります。
僕も、雨天予報で登山を中止にしたのに
当日になると全然雨が降っていない(むしろ晴れている)ということがあります。
そんな時に、なんで判断を間違ってしまったんだろうと思うのはやめましょう。
登山は自然を相手にしています。
自然に絶対正しいという答えはありません。
逆に、もし登山に行っていれば大雨で撤退しなければいけないという可能性もあったはずです。
登山パーティーのメンバーも
自然を予測するのは難しいと理解してくれていれば
後出しじゃんけんのように攻めることは絶対しないはずです。
自分が出した決断には誇りを持ちましょう。
まとめ
今回は、登山パーティーのリーダーに大切なことの一つ
「決断する能力」について紹介しました。
今回紹介したことを参考に、リーダーとして責任をもった決断ができることを願っています。
次回は「メンバーを信頼する能力」について紹介します。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
2020.03.07 【登山で初めてのリーダー】登山パーティーのリーダーに大切なこと③メンバーを信頼する能力【経験則】 を更新しました。
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